教皇ベネディクト16世は、29日、聖ペトロ・聖パウロ使徒の大祝日のミサの中で、今年任命された首都大司教らに、祝別されたパリウムを手渡された。
聖ペトロと聖パウロは、教会を代表する2本の柱、ローマの保護聖人として知られる。
ガリラヤ湖の漁師であったペトロ(シモン)は、キリストに召されて弟子となり、ペトロ(岩)の名を与えられ、使徒たちの指導者とされた。キリストが捕われた時逃げ出した彼は、復活したイエスに出会い、聖霊を受けることで、使徒としての使命を全うする力を得た。パレスチナ、アンティオキアなどで活動の後、ローマを自身の司教座と定め布教、初代の教皇となった。ネロ皇帝の迫害によって殉教。後、墓の上に聖ペトロ大聖堂が建てられた。
一方、シリアのタルソ生れのパウロは、最初熱烈なファリサイ人としてキリスト教徒を迫害していたが、ダマスコ途上で回心した後、キリスト教の熱心な信者、精力的な宣教者となる。地中海沿岸の諸国に3回の伝道旅行を行い、キリスト教の布教に多大な貢献をした。キリスト教神学の基礎を打ちたて、信者たちに多くの手紙を書き送った。ネロ皇帝の迫害下、ローマで殉教。オスティア街道沿いに葬られた。
この日、聖ペトロ大聖堂で行われたミサには、世界各国からの多数の巡礼者はもとより、コンスタンティノープルのバルトロメオ1世派遣の使節も参加した。東方正教会コンスタンティノープル総主教庁が、聖ペトロ・聖パウロの祝日にバチカンに使節を送るのは毎年のことで、これに対しバチカンは、例年聖アンドレアの祝日に使節を派遣している。
ラテン語の荘厳ミサを司式された教皇は説教で、イエス・キリストの偉大な証し人であるこの二使徒の大祝日の意味をいわば教会の「普遍性の祭日」であると要約された。
そして、「普遍性(カトリック性)」とは「一致する多様性」であると説かれた教皇は、「天地の唯一の神がイエス・キリストにおいて姿を現され、私たちは人生の本質的な真理、『どこから、どこへ』を目に見える形で知るようになったために、多様性の中で人々が一致することが可能となったのです」と述べられた。
また教皇は、このように普遍にして一つの教会は、キリストの愛と犠牲によって絶えず聖化され、使徒の信仰と使命を継続していく教会でもあると説明され、「聖なる、普遍の、使徒的、唯一の教会」の姿を浮き彫りにされた。
説教に続いて、伝統儀式のパリウム授与では、この日出席した32名の新首都大司教に教皇自らパリウムが授けられた。
パリウムは、毎年1月21日の聖アグネスの日に教皇によって祝別された羊の毛で織られた白く細長い帯状の布に十字の刺繍を施し、輪状にしたもので、首を通して胸と両肩にかける。パリウムを身につけることは、羊を肩に乗せた「善き羊飼い」の姿を象徴する。今日では教皇も教皇職開始のミサで、かつての三重冠の代わりにパリウムを受けるようになった。
教皇は大司教ら一人ひとりの肩に祝別されたパリウムを掛けられ、平和の挨拶を交換された。
ミサの終わりに、教皇は中央祭壇地下にある聖ペトロの墓に降り、墓前で祈りを捧げられた。
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