ボスニア・ヘルツェゴビナの司教らのバチカンへの定期訪問が23日より始まった。
サラエボ大司教のヴィンコ・プルジク枢機卿をはじめとする司教団は、28日までバチカンに滞在、この間、教皇への謁見や教皇庁の諸機関への訪問を行う予定。
1995年11月21日のデイトン和平合意による内戦終結から10年が経過したこの機会に行われる定期訪問は、ボスニア・ヘルツェゴビナの情勢と、同国のカトリック教会の現状を報告する上で意味深い。
ボスニア・ヘルツェゴビナは、主にムスリム系、セルビア系、クロアチア系の民族によって構成され、宗教もイスラム教スンニ派、セルビア正教、カトリック、その他に分類される。
旧ユーゴスラビア連邦からの独立をきっかけに、1992年4月に突入した民族間の闘争は、死者20万または30万、難民200万という深い傷跡を同国に残すこととなった。
この内戦でカトリック共同体も深刻な打撃を受けた。サラエボだけで内戦前約50万人いた信者は12万5千人に激減。国全体では99の教会が完全に破壊され、127の教会が被害を受けたほか、多くの修道院や教会関係施設も攻撃の対象となった。難民となったカトリック信者の数は45万人に及んでいる。
和平合意でボスニア・ヘルツェゴビナは、ムスリム系とクロアチア系からなるボスニア・ヘルツェゴビナ連邦と、セルビア系が占めるスルプスカ共和国(セルビア共和国)の2つの国が並立する一つの主権国家として承認された。国家元首は各主要民族の代表1人ずつからなる大統領評議会のメンバーが交代制で受け持っている。国際社会の協力を得て国家安定への努力がはらわれ、難民の帰還も進められているが、民族間の分裂はいまだ完全に埋められたとはいえず、和解と平和へ向けて多くの課題を抱えている。
教皇ヨハネ・パウロ2世は、1997年と2003年に同国を訪問、未来の構築を勇気づけ、真の平和のために祈られている。
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