教皇ベネディクト16世はドイツのアルトエッティング市の名誉市民称号を受け取られた。
ミュンヘンからおよそ90キロ東にあるアルトエッティングは、人口約1万3千人の町。同市の聖母聖堂は、「バイエルンの心臓」とも呼ばれるように同地方で最も重要なカトリック巡礼地として知られ、年間100万人の巡礼者が訪れる。
この巡礼聖堂は8世紀に建てられた礼拝堂を起源とし、伝説によればバイエルン大公が初めてカトリック信仰に入った時、ここで洗礼を授けられたとされる。1330年頃、同地に聖母子の彫像がもたらされ、この礼拝堂に安置された。1489年、聖母の出現とそれに伴う様々な奇跡が伝えられ、以来、巡礼者は絶えることなく続いた。シナノキで作られたこの聖母子像はろうそくの煤や年代化で黒味を増していったことから「黒い聖母」と呼ばれ、現在でも巡礼聖堂の中心となっている。
7日の一般謁見の後、パウロ6世ホールの来賓室で行なわれた名誉市民称号授与式で、教皇はアルトエッティング市長ら使節団に感謝と喜びの言葉を述べ、様々な思い出を交えながら、同地や聖母巡礼聖堂との深い精神的つながりをお話になった。
ご自分の故郷からも遠くないアルトエッティングには、幼少時からいろいろな思い出があるが、その最初の記憶は聖コンラド修道者(1818−1894)の列聖式(1934年)にさかのぼることを教皇は紹介。
中でも特別心に残ることとして、第2次世界大戦が終わりご自分と兄が無傷で家に戻ることができた時、当時68歳だった父は息子たちの帰還を聖母に感謝してトラウンシュタインからアルトエッティングまで長い道のりを徒歩で巡礼したことを思い起こされた。
また、1980年ヨハネ・パウロ2世のドイツ司牧訪問の際に同巡礼聖堂を案内した時の喜び、さらに数年前に巡礼グループと共にご自分も同地まで歩かれ、「足で巡礼することは、心で巡礼すること」との感をいっそう深めたことなどを語られ、アルトエッティングの聖母がこれからもご自分の巡礼を見守ってくださるようにと祈られた。
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