教皇ベネディクト16世は、28日、トルコ司牧訪問に出発、最初の訪問先、首都アンカラに到着された。
アンカラ行きの特別機の中で行なわれた記者団との懇談で、教皇は今回の訪問は政治的なものではなく司牧的なものであり、これと共に、イスラム教や正教会をはじめとする他のキリスト教教会との対話を深め、平和と兄弟愛を共に促進するため、友好と尊敬に基づく出会いを持つことを目的としていると述べられた。
同日現地時間の正午過ぎ、アンカラ空港に到着した教皇を、エルドアン首相をはじめとするトルコ政府関係者、また同国のカトリック教会の代表者らが出迎えた。
空港での教皇とエルドアン首相の会談は、和やかな雰囲気のもとおよそ20分にわたり行われた。
エルドアン首相は、会談後の記者会見で、暴力の文化が蔓延し、差異が強調される今日、イスラム教徒を大半とする、政教分離・民主主義国トルコを教皇が訪問し、平和と寛容のメッセージを伝えることに、大きな意義を表明した。
教皇はこの後、アンカラ市内に、トルコ共和国建国の父、ケマル・アタテュルクの霊廟を訪問された。教皇は霊廟内で、初代大統領アタテュルクの棺に花輪を捧げられた。霊廟付属の博物館に移られた教皇は、「宗教と文化の出会いと交差の地トルコ、アジアとヨーロッパをつなぐこの地で、トルコ共和国創立者の言葉を私の言葉としたいと思います。祖国に平和、世界に平和を」と英語で記帳された。
続いて、教皇は大統領官邸を表敬訪問され、セゼル大統領と会談された。
さらに、宗教省を訪問された教皇は、バルダコール宗教省大臣とお会いになった。始めに、国内のイスラム教代表者と、カトリック教会代表者同席のもと、大臣と教皇の対談が行なわれ、続いて記者ホールで報道陣を交えての会見が行なわれた。
この会見で、宗教相は教皇に歓迎の挨拶をおくり、今回の司牧訪問は宗教間の調和を育てるための重要な一歩と述べた。同相は、現代の人類が直面する様々な問題に共に取り組む必要性を述べる中で、イスラム教はあらゆる暴力とテロリズムに反対する宗教であり、イスラム教を暴力の原因と見る誤った先入観があることを遺憾とした。
これに続く教皇の言葉では、歴史と文化に彩られた国トルコを訪問する喜びと、トルコ国民への心からの敬意が表明された。教皇は豊かに織りなされた同国の歴史に触れながら、この地に育った初期キリスト教共同体と、大きく開花したイスラム文明に言及された。
教皇はまた、大司教時代にイスタンブールの教皇使節を務め、トルコ国民への深い敬愛を日記に綴った福者教皇ヨハネ23世と、1979年に同国を訪問し、道徳価値の保護と平和と自由推進のためにキリスト教徒とイスラム教徒の協力を呼びかけたヨハネ・パウロ2世を思い起こされた。
こうした先代教皇たちの歩みを、今後も誠実な友情の交換として進展させたいと述べた教皇は、第2バチカン公会議の「キリスト教以外の諸宗教に対する教会の態度についての宣言」が表す精神のもとに、人権や、正義、連帯、自由、安全、平和といった共通の課題のためにキリスト教徒とイスラム教徒の相互理解と誠実な対話の推進を希望された。
また、教皇はこの日の最後の公式行事として、夕方、アンカラ市内のバチカン大使館でトルコ駐在の外交団との出会いを持たれた。
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