教皇ベネディクト16世は、8日、駐バチカン外交団と新年の挨拶を交換された。
この新年恒例の集いにあたり、バチカン駐在の各国大使らがバチカン宮殿の王宮の間に一堂に会した。
挨拶の冒頭で平和な新年をすべての人々に祈られた教皇は、続いて現在の世界情勢を展望された。
教皇は21世紀の現在においてもなお重大な影を投げかけている飢餓や旱魃、貧困の問題に対し、世界経済とその成長の構造的原因を排除し、各自の生活スタイルを見直していく必要を訴えられた。
また、軍縮問題においては、大量殺戮兵器はもとより通常兵器をめぐる交渉が困難になっている上、世界的に軍事費の増加が見られることを憂慮され、テロリズムと共に悪化した安全保障問題にグローバルかつ長期的アプローチを持って対処していく必要性を述べられたほか、人道的危機に対する支援の強化や、いのちや家族の価値の保護の大切さを説かれた。
一方、文化・宗教間の対話を目指し様々な試みが行なわれていること、国連を主軸に基本的人権の保護に対する努力が高まっていることを前向きな点として評価された。
さらに、教皇は各大陸の状況として、政治的・人道的危機が続くアフリカにまず目を向けられ、特にスーダンのダルフール、アフリカ東端地方、ウガンダ、大湖地域、コートジボアールなどの国々に平和と和解、社会・経済の安定がもたらされるよう願われた。
次にアメリカ大陸情勢について話された教皇は、今年5月のブラジル司牧訪問を予告されると共に、ラテンアメリカとカリブ諸国の経済的再生と麻薬や収賄問題への取り組み、就学向上などの良い傾向に喜びを表された。他方で、内戦の続くコロンビアの治安回復、キューバと国際社会間の交流、貧困と暴力の中に生きるハイチへの支援を訴えられた。
アジア大陸について教皇は、中国やインドを中心とした大きな経済発展に言及する中で、昨年末、世界貿易機関に加盟したベトナムにも励ましをおくられた。
教皇はアジアの国々で小さいながらも活発であるキリスト教共同体が、信教の自由の保証のもと活動できるように希望されたほか、東ティモールはじめ各国の民主化のプロセスを見守られた。
さらに、教皇は朝鮮半島で高まる緊張について、和解と非核武装化を目指すことが同地域全域に良い結果をもたらすことになるとし、誠実な交渉の継続を呼びかけると同時に、最も弱い人々に対する人道支援が欠けることのないよう願われた。
教皇はこのほか、暴力とテロ攻撃が続くアフガニスタン、再び内戦状態にあるスリランカに対話の道を望まれた。
同様にイスラエル、パレスチナ、レバノンを中心とした中東情勢に対しても、武力はいかなる解決をももたらさないと述べ、異なる民族・宗教・社会のすべてのグループを尊重した交渉の重要さを訴えられ、イランの核計画については国際社会の憂慮に答える十分な回答を、イラクには暴力の終結と社会の再興と和解を急務として示された。
ヨーロッパ大陸においては、教皇はブルガリアとルーマニアの欧州連合加盟に言及されたほか、バルカン諸国の国内の安定や、テロや闘争のない社会を祈られた。
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