教皇ベネディクト16世は、30日、中国のカトリック教会関係者に向けて書簡を発表された。
この書簡は「教皇ベネディクト16世の中華人民共和国におけるカトリック教会の司教、司祭、奉献生活者、信徒への手紙」と題されたもの。
教皇は今年1月19日、20日に中国のカトリック教会の現状について知識を深めることを目的とした会議を招集。この会議では苦難に満ちた中国の教会の歴史と近年の出来事を振る中で、同地の教会の最重要問題として、教会の神的性格という基本原理に対する適切な対応と、信教の自由の必要性が指摘されると共に、中国政府関係者との建設的な対話への意欲が示された。
会議の詳細な報告を受けた教皇は、中国のカトリック信者に向け書簡を記す旨を表明、その発表が待たれていた。
教皇庁広報局は今回の教皇書簡について次のように声明した。
「教皇はこの書簡を通し、中国のカトリック共同体への愛情と精神的一致を表すことを望まれている。
教皇の書簡は、中国のすべてのカトリック信者への精神的な愛情と中国国民に対する尊敬を伝えると共に、また一方で教会学的な観点からカトリックの伝統の永続的原理と第2バチカン公会議の精神を思い起こさせ、愛(カリタス)と一致、真理へと信者らを熱く招いている。
中国のカトリック教会に直接宛てられ、きわめて宗教的な問題を扱ったこの書簡は、しばらく前から中国の司教と司祭たちによって提出されていた問題に明確な解答を与えるもので、したがって政治的文書ではなく、たとえ中国の教会が日常的に直面する困難を無視することはできないとしても、中国政府を非難する意図を持つものではない。
教皇は、キリストご自身が望まれ使徒や後継者たちに託された教会についての「最初からの計画」を思い出させ、その光のもとにここ50年間に起きた中国の教会生活における諸問題を考察されている。
ベネディクト16世はこの書簡において、中国のカトリック共同体をめぐる様々な問題の解決を見出し、教皇庁と中華人民共和国政府との関係正常化を得ることを目的に、中国政府との安定した建設的な対話を前向きに望まれている。そして、カトリック信者は、信仰の自由と、その生活における寛大な証しをもって、良き市民として中国国民の善のためにも貢献できると確信しておられる。」
書簡は全20章の長いもので、主に第1部「教会の状況・神学的観点」と第2部「司牧生活の指標」から構成されている。書簡の日付は、2007年5月27日、聖霊降臨の大祝日にと記されている。
冒頭の挨拶で教皇は「あなたがたの存在がいかに私の心と祈りを占めているか、私たちを精神的に結ぶ交わりの絆がいかに深いかは皆さんがよくご存知です」と中国のカトリック共同体に対する愛情と兄弟的一致を率直に表すと共に、同国の教会が時に苦しみの代償を払ってまでも主キリストとその教会に示してきた忠実に喜びを表された。
導入部に続く、第1部は、「グローバル化、近代化、無神論主義」「尊重に満ちた建設的な対話」「普遍の教会における部分教会間の交わり」「教会内部の緊張と分裂:赦しと和解」「教会共同体と国家組織:真理と愛において生きる関係」「中国の司教団」「司教の任命」がテーマとされる。
第2部は、「秘跡、教区、小教区の統括」「教会管轄区」「カトリック共同体」「司祭」「召命と宗教的育成」「信徒と家庭」「成人の入信」「宣教的召命」をテーマにしている。
また、結論部において教皇は、上海の余山の聖母巡礼聖堂においても深く崇敬されている「キリスト者の助け手、聖マリア(扶助者聖母)」に捧げられた5月24日を、中国の教会のために祈る日とすることを望まれ、この日に中国の信者はもとより、世界中の信者が同地の教会のために兄弟的連帯を示すよう願われている。
そして教皇は、「あなたがたの信仰はその試練によって本物と証明され...イエス・キリストが現われるときには、称賛と光栄と誉れとをもたらすのです」というペトロの手紙の一節(1ペトロ1,6-7)をもって、励ましと共に書簡を締めくくられている。
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